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東京地方裁判所 昭和55年(行ウ)68号 判決

原告 横田久夫

被告 蒲田社会保険事務所長

被告参加人 厚生大臣

参加人代理人 坂本由喜子 玉田真一 外二名

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた判決

一  原告

1  被告が昭和五三年三月九日付けで原告に対してなした保険給付金支給決定取消処分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告及び参加人

主文同旨

第二当事者の主張

一  原告の請求原因

1  原告は、柔道整復師アラルコン・イマヌエル(以下「アラルコン」という。)から、昭和五二年一〇月三日から同月一一日までの間に計三回の左肩部捻挫療養のための施術(以下「本件施術」という。)を受け、これに要した費用三〇七〇円から一部負担金に相当する額二〇〇円を控除した二八七〇円につき、健康保険法(昭和五五年法律第一〇八号による改正前のもの。以下「法」という。)四四条の規定に基づき、昭和五三年一月三一日被告に対し、療養費の支給を申請した(以下「本件申請」という。)。

2  被告は、昭和五三年二月三日原告に対し、療養費二八七〇円を支給する旨の決定(以下「原決定」という。)をした。

3  しかるに、被告は、昭和五三年三月九日原告に対し、原決定のうち一四八〇円を超える一三九〇円相当部分を取り消す旨の決定(以下「本件決定」という。)をした。

4  原告は、昭和五三年三月二八日東京都社会保険審査官に対し、本件決定の取消しを求めて審査請求をしたが、同年四月二〇日棄却決定を受け、同月二六日社会保険審査会に対し、再審査請求をしたものの、昭和五五年二月二九日棄却裁決を受けた。

5  しかしながら、本件決定は、療養費の支給額を定めた法四四条ノ二の解釈適用を誤つた違法な処分であるから、その取消しを求める。

二  被告及び参加人の請求原因に対する認否

請求原因1ないし4の事実は認めるが、同5の主張は争う。

三  被告及び参加人の主張

1  法は、保険給付として、現物給付たる「療養ノ給付」を行うことを原則としている(法四三条)。すなわち、保険者は、被保険者に対し、直接の療養を与えることを原則としているところ、この療養の給付の中心をなすものは、法に定める指定を受けた保険医療機関が、法に定める登録を受けた保険医に担当させて行う診療である。そして、被保険者は保険医療機関で療養の給付(保険診療)を受け、保険医療機関は保険者に対し療養の給付に関する費用を請求するという制度が採用されているところ、保険医療機関が保険者に請求し得る費用の額について、法四三条ノ九第一項は「保険医療機関‥‥ガ療養ノ給付ニ関シ保険者ニ請求スルコトヲ得ル費用ノ額ハ療養ニ要スル費用ノ額ヨリ一部負担金ニ相当スル額ヲ控除シタル額トス」と規定し、更に同条二項は「前項ノ療養ニ要スル費用ノ額ハ厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ之ヲ算定スルモノトス」と規定しており、厚生大臣は、同項の規定に基づき、昭和三三年六月三〇日厚生省告示第一七七号をもつて「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(以下「厚生省告示」という。)を定めている。

2  一方、法は、右の現物給付(療養の給付)の原則に対する例外として、現金給付たる療養費の支給について定めている。法四四条の規定がそれで、「保険者ハ療養ノ給付ヲ為スコト困難ナリト認メタルトキ又ハ被保険者ガ緊急其ノ他巳ムヲ得ザル場合ニ於テ第四十三条第三項各号ニ掲グル病院、診療所若ハ薬局以外ノ病院、診療所、薬局其ノ他ノ者ニ就キ診療、薬剤ノ支給若ハ手当ヲ受ケタル場合ニ於テ保険者ガ其ノ必要アリト認メタルトキハ療養ノ給付ニ代ヘテ療養費ヲ支給スルコトヲ得」と定めている。そして、右療養費の額について、法四四条ノ二第一項は「前条ノ規定ニ依リ支給スル療養費ノ額ハ療養ニ要スル費用ヨリ一部負担金ニ相当スル額ヲ控除シタル額ヲ標準トシテ保険者之ヲ定ム」と規定し、同条二項は「前項ノ療養ニ要スル費用ノ算定ニ関シテハ第四十三条ノ九第一項ノ療養ニ要スル費用ノ算定ノ例ニ依ル」と規定している。

右の法四四条ノ二の規定は、支給する療養費の額について、法四三条ノ九と同様の算定方法によつて算定するという趣旨ではなく、同条二項の規定に基づく厚生省告示の例によつて算定した額から一部負担金に相当する額を控除した額を参考とし、最終的には保険者が個々の場合に応じ裁量により決定するという趣旨である。すなわち、療養費の支給対象として予想される行為には、非保険医の診療行為や、本件の如き柔道整復師による施術、あんま、はり、きゆう、沖縄の医かい輔による治療等の非医師による種々の療養行為があり、特に非医師の療養行為は、担当する者が医師でない上、厚生省告示が予定している診療内容と一致するとは限らないので、保険者が諸般の事情を考慮して個々的に現金給付の額を定めることにしているのである。

3  柔道整復師の施術は、法制定当初から特例的に法四四条の「療養ノ給付ヲ為スコト困難ナリト認メタルトキ」に該当するとして、療養費の支給の対象とする取扱いがなされてきた。

ところで、政府の管掌する健康保険の保険者は国であるところ、療養費の具体的な支給額の決定の事務は、都道府県知事に委任されている(法施行令二条四号)ので、柔道整復師の施術に係る療養費の支給額の決定も知事が行つている(東京都の場合は、更にその権限を社会保険事務所長に委任している。)。しかしながら、各都道府県ごとに、柔道整復師の同種の施術について、異なる支給額が決定されることになれば、法の公平妥当な運営が阻害されるおそれがあるといえる。そこで、法の実施を所管する厚生大臣の命を受けた補助機関たる厚生省保険局長は、全国的な統一、法の公平を図る上から、「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」(昭和三三年九月三〇日付け保発第六四号及び昭和五一年四月三〇日付け保発第二一号厚生省保険局長通知。以下「保険局長通知」という。)を定め、これにより柔道整復師の施術に要する費用の額を算定し、その額から一部負担金に相当する額を控除した額で療養費の支給を行うべきことを関係者に下命している。保険局長通知は、法四四条ノ二第一項の実施につき権限を有する者の「依命通達」という性格を有するとともに、関係者すべてに法の実施につき下命されたもので、厚生省告示と同じく、行政庁のみならず、被保険者もこれに従うことが命じられる法的性格を有するものである。また、保険局長通知が昭和三三年九月関係団体(柔道整復師会等の団体)の意見を参考として定められたこと、その後二〇有余年間に数次の改訂がなされ、その都度関係者に周知徹底され、柔道整復師の施術に係る療養費の支給額が全国的に統一されて保険局長通知に基づき算定されていることからしても、保険局長通知は、単なる行政庁における事務処理の内規にとどまるものではなく、法的性格を有することが明らかである。

4  ところが、原告は、厚生省告示の別表第四診療報酬点数表(乙)(以下「乙点数表」という。)によつて療養に要する費用の額三〇七〇円を算出し、一部負担金に相当する額二〇〇円を控除した二八七〇円の支給を求めて本件申請を行つた。被告は、誤つて、本件申請をそのまま認容し、原決定を行つた。しかし、被告において、本件申請を改めて査察したところ、柔道整復師の施術に係る療養費の支給申請であつて、保険局長通知によるべきものであることが判明したので、保険局長通知によつて改めて本件施術に要する費用の額を算定したところ一六八〇円となり、療養費の支給額は一部負担金に相当する額二〇〇円を控除した一四八〇円となつた。そこで、原決定のうちの一四八〇円を超える一三九〇円相当部分を取り消す旨の本件決定を行つたものであり、本件決定は適法である。

5  ところで、保険局長通知は、厚生省告示を基礎として斟酌し、更に、医師と柔道整復師との治療水準の違いを比較勘案して定められたもので、原告が本件申請で依拠した厚生省告示の乙点数表との間には、額において較差がある。しかし、保険局長通知は法四四条ノ二の規定に基づき現金給付の対象たる柔道整復師の施術に要する費用の額について定めたものであり、厚生省告示は法四三条ノ九の規定に基づき現物給付たる療養の給付に要する費用の額について定めたものであつて、法的根拠を異にしており、また、柔道整復師の施術と保険医の診療とは次のとおり異質なものであるから、右の較差をもつて不合理かつ違法なものということはできない。

(一) 医師は、診療に当たつては、医学通念に基づき、必要十分な局所及び全身的な診断及び治療を行う義務を有するものである。したがつて、打撲、捻挫、脱臼、骨折が一見明らかな患者であつても、問診、理学的診断を行い、必要な場合は、レントゲン検査、尿・血液の検査等を実施し、全身的疾患の有無及び状態を診断し、その結果に基づき、観血的・非観血的整復、注射、投薬、処置、理学療法等の一又は二以上を併用し、全身的治療及び全身的治療の一環としての局所的治療を行い、傷病の治療及び健康の保持を図ることが期待されている。

一方、柔道整復師の業務は、打撲、捻挫、脱臼、骨折に対して、非観血的徒手整復及びこれに伴う治療行為を行うことである。

柔道整復師は、その行為を行うに当つてレントゲンを用いることは認められておらず(診療放射線技師及び診療エツクス線技師法二四条一項)、治療に当たつて、外科手術を行い、又は薬品を投与し、若しくはその指示をする等の行為をしてはならない(柔道整復師法一六条)。また、応急手当の場合以外、医師の同意を得なければ、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない(柔道整復師法一七条)とされている。

すなわち、柔道整復師の業務は医師の行う業務に比較して、著しく限定されているのである。柔道整復師の行う判断行為は、非観血的徒手整復術の適応の有無及び同術を適切に運用するための判断行為に限定されるものであり、医師の行う診断行為の限られた一部分を行つているにすぎない。

(二) 医師と柔道整復師の業務範囲が異なることから、医師と柔道整復師の免許要件も異なつている。医師は、通常、高等学校卒業後六年の大学教育を終了し、医師国家試験に合格することを要求されているが、柔道整復師は中学校卒業後四年又は高等学校卒業後二年の養成施設における教育を終了し、都道府県知事の行う試験に合格することが要求されているものである。すなわち、医師と柔道整復師とは、教育年限及びその範囲が異なつており、この教育に基づく両者の判断及び行為は、画一的に同質であると論ずることはできない。

(三) 医師が診療に従事する医療機関たる診療所及び病院は、医師の業務を行うための施設であり、通常レントゲン装置等を備えているが、柔道整復師の施術所は、かかる装置類は設置されておらず、業務の範囲からいつて、当然両者の間には格差がある。

(四) 柔道整復師の治療と医師が投薬、注射及び手術を行わないで行つた治療(非観血的整復)とを部分的に限定して比較した場合、一見類似しているかのように見える場合があるが、この場合においても、両者の行為は同質ということはできない。つまり、医師においては全身的診断を行つた(柔道整復師は行うことはできない。)上で治療方針が立てられており、また、局所的に見てもレントゲン検査(柔道整復師は行うことができない。)等により治療方法の判断が下されており、更に、万一病状が変化し、緊急に投薬、注射、手術等を要するような事態となつた場合においても、医療機関においては、それに対応できる要員と設備が備えられている等の担保がなされている。

四  原告の反論

1  原告が本件施術に要する費用の額を厚生省告示の乙点数表によつて三〇七〇円と算出した上、一部負担金に相当する額二〇〇円を控除した二八七〇円の支給を求めて本件申請をしたこと、本件施術に要する費用の額を保険局長通知によつて算定すると一六八〇円となり、療養費の支給額が一部負担金に相当する額二〇〇円を控除した一四八〇円となることは認める。

2  法四四条の療養費の支給制度は、療養の現物給付を補完する趣旨から設けられたものである。被保険者が、保険者の提供する現物給付的医療サービスで満足せず、その傷病にかなつた療養を受けようとする場合は、可及的にそのニーズにこたえ、保険的サービスを実現できるようにしなければならない。この要求は、健康で文化的な生活の享受を保障された国民の権利の一つといえる。療養費の支給制度は、この要求にこたえ、現物給付的医療サービスの不足を補い、これを補完して、被保険者が自己の判断に従つてその傷病にかなつた療養を受け得るようにしたものである。

柔道整復は、運動器系領域における外力性損傷(打撲、捻挫、脱臼、骨折)に関し、筋肉の弛緩を利用し力学的方法を用いて骨構造に適した方法で徒手にて治療するものであるが、この治療方法は、相当古くからいわゆる無血整復・徒手整復として利用され、また、医学的にも承認されているものである。整形外科医の未発達な時代には、骨折等の治療にこの方法が多く用いられていたが、現在でも、観血的治療を主体とし、第二次的損傷、投薬などを伴い、完治に長期間を要するところの整形外科医治療を避け、第二次的損傷が全くなく、投薬の副作用を心配する必要もなく、かつ、短期間で治療効果をあげ得る徒手整復治療を望んで、徒手整復を専門とする柔道整復師にその医療サービスを求める患者が多い。したがつて、本来ならば、柔道整復師の施術所も保険医療機関に指定して、現物給付的医療サービスを完全にし、国民の要求にこたえるべきであるが、その制度が欠如しているため、療養費の支給制度で補完することとし、柔道整復師の施術は一般的に「療養ノ給付ヲ為スコト困難ナリト認メタルトキ」に当たるとして療養費を支給する取扱いがなされてきたのである。

このように、療養費の支給制度は、現物給付である療養の給付に代わり、その不足を補完するものであるから、保険給付上、可及的に療養の給付と同等の取扱いがなされるべきである。したがつて、被保険者が、法四三条一項各号の療養の給付と同内容、同程度の療養を現実に受け、療養の給付において保険者が保険医療機関に支払う費用相当額の金員を支弁した場合には、保険者は、被保険者に対し、右金員を支給すべきである。療養費の支給制度は、被保険者が療養の給付を受け得なかつたときに、それに代えて療養の給付を受けたのと同程度の保険利益を認めようとするものであつて、療養費の支給であるからといつて、療養の給付の場合以上の自己負担を強いられるいわれはない。保険者が保険医療機関に支払う費用相当額を下回る額の療養費のみを支給し、その差額を被保険者の自己負担とすることは違法である。

3  療養費の支給額は、保険者が自由裁量的に決定し得るものでなく、「療養ニ要スル費用」より一部負担金に相当する額を控除した額を標準として決定すべきことが法定されている(法四四条ノ二第一項)。そして、「療養ニ要スル費用」の算定に関しては、法四三条ノ九第一項の療養に要する費用の算定の例によることとされている(法四四条ノ二第二項)。更に、法四三条ノ九第一項の療養に要する費用の額は、「厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ」算定するものとされているから、結局、法四四条ノ二第一項の「療養ニ要スル費用」は、厚生省告示によつて算定すべきことが法定されているのである。すなわち、法は、療養の給付の場合も療養費の支給の場合も、療養に要する費用の算定ついては厚生省告示によるべきことを定めているのであつて、これとは別体系の算定基準を設けることを予定してはいない。ただ、療養費の支給の場合は、療養の給付の場合と異なつて療養内容が定型化していないため、具体的な内容に応じて厚生省告示を弾力的に運用し得るよう配慮しているにすぎない。厚生省告示は、被保険者らも参加する中央社会保険医療協議会において審議されるが、それは非保険医等の場合にも料金の標準として使用されることを予定してなされるものであり、法もそれを前提にしているのである。

ところが、保険局長通知は、厚生省告示を単に修正するものではなく、「療養ニ要スル費用」の算定につき、厚生省告示とは別個の基準を設定するものであるところ、このように、厚生省告示とは別体系の基準を定め、これにより「療養ニ要スル費用」を算定することは、右に述べたように、法四四条ノ二の規定に明らかに違反する。したがつて、厚生省告示によらず、保険局長通知によつた本件決定は違法というべきである。

4  保険局長通知は、療養担当者及び被保険者の意見が全く反映されていない行政当局の一方的な通知であつて、適正手続の保障に違反している。厚生省告示の決定については、関係者に意見を述べる機会が提供され、適正手続の保障が間接的ながら満足されているといえる。しかし、保険局長通知の場合は、その決定過程が全く公開されておらず、関係者が意見を述べる機会すら保障されておらず、一方的、押し付け的に行政当局の恣意的判断で決定されているのである。したがつて、保険局長通知は、適正手続の保障を著しく欠き、違法なものといわなければならない。

5  保険局長通知は、次のとおり、内容的にも合理性を欠き、違法である。

(一) 保険局長通知(ただし、昭和五三年三月一日から実施のもの。)による療養に要する費用の額は別紙一のとおりであり、厚生省告示の乙点数表(ただし、昭和五三年一月二八日厚生省告示第二〇号による改正後のもの。)による療養に要する費用の額は別紙二のとおりである。

(二) 保険局長通知の初検料は、乙点数表のそれ(初診料)と比較すると、金額が低く、乳幼児加算もないが、このような較差を設けることの合理的理由がない。

(三) 乙点数表には再診料が定められているが、保険局長通知には再診料に関する定めがない。柔道整復師は、初診のみならず再診においても、患者の負傷状況及び経過を診断し、それに即した整復手当をするものであり、保険局長通知が継続治療の場合の診断行為について料金を定めていない瑕疵は重大である。

(四) 保険局長通知の往療料は、乙点数表のそれ(往診料)と比較すると、金額が低く、深夜加算及び診療所用時間加算もないが、このような較差を設けることの合理的理由がない。

(五) 保険局長通知は、ギブス包帯、湿布及びこう薬の料金に関する定めを欠き、これらの料金を被保険者の負担とし、金属副子についても網目状のものに限定し、その実費及び使用数に関係なく一律の金額を定めている。一方、乙点数表は、ギブス包帯、湿布及びこう薬の料金を定め、金属副子についても、実費計算としており、この較差は不合理である。

(六) 保険局長通知は、第一回目の治療費について、整復料、固定料及び施療料の三つに分類して一律の料金を定め、第二回目以降については、疾患の種類及び治療の内容に関係なく一律の後療料を定めているにすぎない。これに対し、乙点数表は、治療内容を類型的に分類し、それぞれについて点数を定めている。このことからも、保険局長通知が、柔道整復師の業務を正確に理解した上で、業務内容に適合した基準を定めたものでないことが明らかである。

6  療養費の支給の対象となる診療行為が、厚生省告示で定める診療行為と内容的に一致しない場合には、当該診療内容の実情に応じ、厚生省告示を「標準トシテ」療養に要する費用の額を算定することになろうが、具体的診療行為が厚生省告示で定める診療行為と内容的に同一であれば、あくまでも厚生省告示によつて療養に要する費用の額を算定すべきである。ちなみに、保険医療機関における徒手整復治療は、そのほとんどが当該医療機関に勤務している柔道整復師やマツサージ師などの補助者によつて行われているのが実状であるが、その場合も厚生省告示によつて右費用の額が算定されているのである。独立して開業する柔道整復師の場合は、診療行為の内容が同じであつても、費用の額の算定基準を別異にするとする合理的理由は全くない。

アラルコンは、昭和五二年一〇月三日、同月五日及び同月一一日の三回にわたり、原告の左肩捻挫に対し問診等の診断行為を行い、かつ、変形徒手矯正術、電気療法、長波療法及び湿布・こう薬を施した。この本件施術は、柔道整復師が独立して行うことの認められた診療行為であり、かつ、厚生省告示の乙点数表に定められたものと同じ内容の診療行為であり、整形外科医のそれと全く異なるところがないのである。そこで、原告は、乙点数表によつて額を算定して本件申請を行つた。

しかるに、被告は、本件施術が乙点数表に定められた診療行為と同種同内容のものであるか否かを具体的に検討することなく、柔道整復師の施術であるということで保険局長通知により額を算定し、本件決定を行つたものであり、これは法四四条ノ二の解釈適用を誤つたものとして取り消されるべきである。

第三証拠〈省略〉

理由

一  請求原因1ないし4の事実及び本件施術に要する費用の額を保険局長通知によつて算定すると一六八〇円となり、本件施術に係る療養費の支給額はこれから一部負担金に相当する額二〇〇円を控除した一四八〇円となることについては、当事者及び参加人間に争いがない。

原告は、本件施術に要する費用の額を厚生省告示によつて算定すると三〇七〇円となるから、これから一部負担金に相当する額二〇〇円を控除した二八七〇円をもつて本件施術に係る療養費の支給額とすべきであり、被告が本件施術に要する費用の額を保険局長通知によつて算定し、本件決定をしたことは違法である、と主張するものである。

二  法は、健康保険の給付として、傷病の治療については、療養そのものの現物給付を行うことを建前としており(法四三条)、療養の給付の中心をなすものは、法に定める指定を受けた保険医療機関が、法に定める登録を受けた保険医に担当させて行う診療であり(法四三条ノ二ないし五)(なお、保険薬局及び保険薬剤師も、保険医療機関及び保険医に並ぶものであるが、本件では対比の必要がないので触れないこととする。)、保険医の診療は、厚生省令で定める一定の診療方針、診療基準及び診療方法で行われるものである(法四三条ノ六及び七)。そして、被保険者は保険医療機関において一部負担金を支払つた上で療養の給付(保険診療)を受け(法四三条ノ八)、保険医療機関は保険者に対し療養の給付に関する費用として「療養ニ要スル費用」から被保険者の一部負担金に相当する額を控除した額を請求する(法四三条ノ九)という制度を採用している。すなわち、保険医療機関は、療養の給付を行う代償として、被保険者から一部負担金を徴収し、保険者から「療養ニ要スル費用」より一部負担金に相当する額を控除した額の支払を受けるもので、法四三条ノ九の「療養ニ要スル費用」は、保険医療機関の診療報酬と称することのできるものである。この「療養ニ要スル費用」すなわち診療報酬は、保険医療機関がその業務を維持運営するために必要な経費に、社会通念上妥当と認められる利潤を加えて算出される性質のもので、その構成要素としては、〈1〉診療に直接必要な人件費(医師、看護婦等の給料等)及び物件費(診療材料費、薬品費等)、〈2〉医業経営に不可欠な経費(地代、家賃、減価償却費、光熱水費、公租公課、支払利息等)、〈3〉一定の利潤(開業医の生活費、法人の投下資本に対する一定の利回り)が考えられるところである。したがつて、「療養ニ要スル費用」は、厳密にいえば個々の医療機関、個々の診療行為ごとに異なる性質のものであるが、担当者が資格の法定された医師であり、診療行為も一定の方針に従つてなされるものであつて、診療行為を分類して費用を定額化することも可能であるところから、法四三条ノ九第二項は、「療養ニ要スル費用ノ額」は厚生大臣の定むるところにより算定すべきものとしており、かくして定められたのが厚生省告示(丙第一号証)である。

一方、法は、〈1〉療養の給付を行うことが困難であると保険者が認めたとき、又は、〈2〉被保険者が緊急その他やむを得ない場合に保険医療機関以外の医療機関等の診療若しくは手当を受け保険者がその必要ありと認めたときは、現物給付たる療養の給付に代え、現金給付たる療養費の支給をすることとしている(法四四条)。

そして、右の療養費の支給額について、法四四条ノ二第一項は、「療養ニ要スル費用」より「一部負担金ニ相当スル額」を控除した額を「標準トシテ保険者之ヲ定ム」と規定し、更に同条二項は、右の「療養ニ要スル費用」の算定に関しては法四三条ノ九第一項の「療養ニ要スル費用」の算定の例による旨を規定している。また、右の「一部負担金ニ相当スル額」とは、法四三条ノ八で規定する一部負担金に相当する額をいうものと解される。

先に述べたように、現物給付の場合、保険者は、保険医療機関に対し、「療養ニ要スル費用」から一部負担金に相当する額を控除した額を支払う。現金給付は、療養の給付に代えて行われるもので、現物給付の補完的役割を果たしており、給付の対象は「療養費」である。そして、療養費の支給額は、現物給付の場合の法四三条ノ九第一項の「療養ニ要スル費用」から一部負担金に相当する額を控除した額を標準として定めるものであるから、結局、現金給付の場合も、被保険者が受けた療養に要する費用から一部負担金に相当する額を控除した額を、療養費として支給する建前を採用しているということができる。したがつて、被保険者が受けた療養に要する費用から一部負担金に相当する額を控除した額を、法四三条ノ九第一項の「療養ニ要スル費用」から一部負担金に相当する額を控除した額を標準として定めることになるが、一部負担金は共通であるから、結局のところ、被保険者の受けた療養に要する費用の額を、法四三条ノ九第一項の「療養ニ要スル費用」の額を標準として定めるということに帰するのである。

ところで、法四三条ノ九第一項の「療養ニ要スル費用」は、前叙のとおり、保険医療機関において現物給付として行う療養に要する費用であり、その額は厚生省告示によつて算定されるものである。被保険者が受けた療養に要する費用の額を、法四三条ノ九第一項の「療養ニ要スル費用」の額を標準として定めるということは、被保険者が保険医療機関以外のところで現実に受けた療養と同種の療養を保険医療機関で現物給付として行つたと仮定して、これに要する費用の額を厚生省告示により算定し、これを一応の基準として、保険医療機関の診療と被保険者の受けた療養との内容、水準、担当者等の差異など、諸般の事情を勘案し、保険者がその裁量で被保険者の受けた療養に要する費用の額を個々的に決定することを意味するものと解される。法が、被保険者が受けた療養に要する費用の額、したがつて療養費の支給額の決定を最終的には保険者の裁量にゆだねていることは、法四三条ノ九第一項が保険医療機関が保険者に請求できる費用の額について「療養ニ要スル費用ノ額ヨリ一部負担金ニ相当スル額ヲ控除シタル額トス」と規定しているのに対し、法四四条ノ二第一項が「標準トシテ保険者之ヲ定ム」との文言を使用していることから明らかというべきである。また、療養費の支給をする場合としては、事業主が資格取得届の提出を怠つたため、まだ被保険者証が交付されない間に保険医療機関で自費診療を受けたとき、保険医療機関の指定を受けていない医療機関で医師の診療を受けたとき、沖縄の医かい輔の治療を受けたとき、あんま、はり、きゆうの施術を受けたとき、柔道整復師の施術を受けたとき等、種々のケースが想定されるところ、これらの診療又は手当は、その内容が現物給付について定めた厚生省告示の診療内容と必ずしも一致せず、診療方針も異なることが考えられ、それに要する費用が右に述べた現物給付の場合の「療養ニ要スル費用」に一致するとは限らない。特に、非医師の場合は、保険医療機関において診療を担当する医師とはその資格を異にしているので、その療養行為が医師の診療行為と同質のものとはいえず、それに要する費用は医師の診療に要する費用とは当然異なることが考えられる。したがつて、療養費の支給の場合に、被保険者の受けた療養に要する費用の額を算定するに際し、保険医療機関において保険医によつて行われる診療に要する費用の額の算定方法を定めた厚生省告示をそのまま使用することは適当でないので、厚生省告示によつて算定される額を一応の基準として、保険者においてその専門的技術的知識を基に諸般の事情を考慮して個々的に療養に要する費用の額を決定すべきものとしたものと解されるのである。

三  柔道整復師の施術が、一般に、療養の給付を行うことが困難であると保険者が認めるときに当たるとして、療養費の支給対象として取り扱われてきたことについては、当事者及び参加人間に争いがないところ、柔道整復師の施術に係る療養費の支給額も、保険者において、右施術と同種の療養を現物給付するとした場合に要する費用の額を厚生省告示に準拠して算出し、これを一応の基準として、諸般の事情を考慮の上で右施術に要する費用の額を判断し、そこから一部負担金に相当する額を控除して決定すべきものということができる。そして、柔道整復師の施術を一般的に療養費の支給対象としているところから、支給件数が当然多数にのぼり、また、柔道整復師の場合は、柔道整復師法でその資格が定められ、その施術内容が個々の柔道整復師によつて大きく異なるものではないから、保険者において、あらかじめ、柔道整復師に共通の施術を一定の項目に分類の上、これに要する費用の額の算定方法を定めることは、当然に許され、公平かつ迅速な行政の実現を図る上からはむしろ望ましいことといえる。政府管掌健康保険の場合、保険給付の決定、給付額の算定その他保険給付に関する事務は、都道府県知事に委任されている(健康保険法施行令二条四号)から、療養費の支給額も都道府県知事が決定することになるが、主務大臣である厚生大臣は、右支給額の決定について都道府県知事を指揮監督することができる(国家行政組織法一五条一項、地方自治法一五〇条)から右の指揮監督権の発動として、柔道整復師の施術に要する費用の額の算定基準を定め、これを都道府県知事に通達することが可能であり、各都道府県知事の決定が区々になることを防止するため望ましいことといえるのである。以上要するに、厚生大臣は、政府管掌健康保険につき、法四四条ノ二第一項の療養費支給額決定権及び都道府県知事に対する指揮監督権を根拠として、厚生省告示に準拠して算定される額を一応の基準として、保険医療機関の診療と柔道整復師の施術との差異等を考慮の上、柔道整復師の施術に要する費用の額の算定基準を定め、これを都道府県知事に通達できるものというべきである。

成立に争いのない乙第五号証ないし第一〇号証及び丙第一号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第一一号証、並びに弁論の全趣旨によれば、保険局長通知は、厚生省保険局長が、厚生大臣の命を受け、厚生省告示によつて算定される額を一応の基準として(このことは、保険局長通知が厚生省告示の改訂に伴つて改訂されていることから明らかである。)、柔道整復師会の意見をも参考にしながら、柔道整復師の施術に要する費用の額の算定基準を定め、これを都道府県知事に通達したものであることが認められる。したがつて、保険局長通知は、法四四条ノ二の保険者の支給額決定権及び厚生大臣の指揮監督権に依拠するもので、都道府県知事にあてられた依命通達の性格を有するものということができる。もつとも、保険局長通知は、行政内部の通達にすぎないから、療養費の支給額決定が保険局長通知に従つてなされたからといつて、対被保険者の関係で当然適法となるものではない。当該決定が適法となるためには、その前提として、保険局長通知の内容が、法四四条ノ二第一項の規定に適合し、同項により保険者に与えられた裁量権の範囲内において柔道整復師の施術に要する費用の額の算定基準を定めるものでなければならないところ、保険局長通知は厚生省告示によつて算定される「療養ニ要スル費用」の額を一応の基準としており、また、保険局長通知が右裁量権の範囲を逸脱しあるいはこれを濫用していると認むべき資料もないから、保険局長通知は内容的に法四四条ノ二第一項の規定に適合していると認むべきである。したがつて、保険局長通知に従つてなされた柔道整復師の施術に係る療養費の支給額決定は適法というべきところ、本件決定も保険局長通知に従つてなされたもので、適法というべきである。

四  原告は、療養費の支給制度は現物給付である療養の給付に代わり、その不足を補完するものであるから、保険給付上、可及的に療養の給付と同等の取扱いがなされるべきであり、被保険者が法四三条一項各号の療養の給付と同内容、同程度の療養を受け、療養の給付において保険者が保険医療機関に支払う費用相当額の金員を支弁した場合は、保険者は被保険者に右金員を支給すべきである、と主張する。

1  法は、療養費の支給について、被保険者が現実に支払つた額を支給するという建前は採用しておらず、被保険者が現実に受けた療養のうち療養の給付の範囲内のものにつき、当該療養を行うため客観的に必要と認められる費用の額から一部負担金に相当する額を控除した額を支給するものとし、右の費用の額の決定を保険者にゆだねているのである。したがつて、被保険者が現実に支払つた額を支給しなかつたからといつて違法となるものではない。問題は、柔道整復師の施術に要する費用の額を保険医療機関の診療に要する費用の額と同一に評価しなければ違法となるか否かである。

2  原告は、柔道整復師の施術が保険医療機関において保険医により行われる徒手整復等と内容及び程度において異なるところがないから、これに要する費用の額を同一に算定すべきであると主張するが、柔道整復師の施術と医師の診療の限られた一部分のみをとれば、明白な差異を見出すことが困難な場合もあることは否定できないとしても、両者の間に被告及び参加人が事実摘示第二の三の5で主張するような質的差異が存することは明らかである。そして、一番の問題は、両者に要する費用であるが、その構成要素としては二で述べたようなものがあげられるところ、部分的には同一基準で評価し得るものがあるにしても、全体としては同一のものとはいえない。医師と柔道整復師の資格要件及び業務には被告及び参加人が事実摘示第二の三の5で主張するような差異があるのであつて、医師と柔道整復師との人件費の差異一つをとらえても、右費用に差異が生ずるのは当然といえる。

したがつて、柔道整復師の施術に要する費用の額と保険医療機関の診療に要する費用の額とを同一に評価しなかつたからといつて違法となるものではなく、原告の主張は採用できない。

3  なお、原告は、療養の給付を受けることができず、これに代えて療養費の支給制度によつた場合に、療養の給付の場合以上の自己負担を強いられるいわれはない、と主張する。しかしながら、法は、右に述べたように、被保険者が受けた療養に要する費用から一部負担金に相当する額を控除した額を支給する建前を採用しており、療養費支給の場合も、一般的には、被保険者は法四三条ノ八の一部負担金のみで療養を受けることができるのである。現に、証人アラルコン・イマヌエルの証言及び弁論の全趣旨によれば、柔道整復師会の方針に従う柔道整復師は、保険局長通知で定める額を料金として施術を行つていることが認められ、原告としてはこれらの柔道整復師について法四三条ノ八の一部負担金のみで施術を受けることが可能であつたといえる。したがつて、原告の右非難は当たらない。原告が、たまたま料金を異にする柔道整復師について、標準以上の料金を支払うことになつたとしても、それは原告の任意の選択によるものであつて、そのことをもつて療養費支給額決定の違法事由とすることはできない。

五  次に、原告は、保険局長通知は「療養ニ要スル費用」につき厚生省告示とは別個の基準を設定するものであるところ、厚生省告示とは別体系の基準を定め、これにより「療養ニ要スル費用」を算定することは法四四条ノ二の規定に違反すると主張する。

しかし、保険局長通知は、「療養ニ要スル費用」の算定基準を設定するものではない。法四四条ノ二及び四三条ノ九にいう「療養ニ要スル費用」は結局のところ保険医療機関の診療に要する費用を指し、その額の算定方法については厚生省告示の定めるところであるが、保険局長通知は、前叙のとおり、保険者が、厚生省告示により算定される「療養ニ要スル費用」を一応の基準として、柔道整復師の施術に要する費用の額を算定するに当たつての基準を定めたものであつて、厚生省告示とはその対象を異にするものである。したがつて、原告の右主張は前提において失当である。

六  また、原告は、保険局長通知は、療養担当及び被保険者の意見が全く反映されていない行政当局の一方的通知であり、適正手続の保障に違反するものである、と主張する。

しかしながら、保険局長通知は、中央社会保険医療協議会に諮問して定められた厚生省告示を一応の基準とし、また、柔道整復師会の意見を聴いて定められたものであつて、療養担当者等の意見が全く反映されていないとの評価は必ずしも正当とはいえない上、そもそも法四四条ノ二は、保険者に対し療養費支給額の決定権を付与し、右決定につき中央社会保険医療協議会への諮問を要求していない。したがつて、右支給額決定の基準を設定する保険局長通知について、これを定めるにつき療養担当者等の意見を聴かなかつたとしても違法の非難を受けるものではないから、原告の右主張も失当である。

七  更に、原告は、保険局長通知は内容において合理性を欠き違法である、と主張する。

法は、前叙のとおり、療養費支給の場合の被保険者の受けた療養に要する費用の額の算定につき、保険医療機関の診療に要する費用の額を一応の基準とすることを要求しているが、あとは保険者において諸般の事情を勘案して判断すべきものとしているのである。原告は、保険医療機関の診療と柔道整復師の施術が同質であることを前提に、厚生省告示と保険局長通知との間に種々の較差が存することを非難するが、両者者の間には先に指摘したような質的差異が存し、これに要する費用にも差異が存するものであるから、右の較差をもつて保険局長通知が直ちに違法であるとすることはできない。その他、保険局長通知が保険者に与えられた裁量の範囲を逸脱していることを認めるに足りる証拠はないから、原告の右主張は採用できない。

八  最後に、原告は、柔道整復師の具体的施術が厚生省告示の乙点数表で定める診療行為と内容的に同じであれば、乙点数表によつて療養費の支給額を決定すべきところ、被告が本件施術の具体的内容を検討することなく、柔道整復師の施術ということだけで保険局長通知によつて支給額を決定したのは違法である、と主張する。

しかしながら、柔道整復師の施術と保険医療機関の診療とを部分的に限定して比較した場合、一見類似して見える場合のあることは否定できないにしても、両者の間には先に指摘したような質的差異が存する。このことは、保険医療機関が柔道整復師を保険医の補助者に使用して診療を行つた場合も変わるものではない。その上、これを要する費用に差異の存することは、先に説明したとおりである。したがつて、柔道整復師の施術一般につき、保険局長通知によつて療養費の支給額を決定しても違法とはいえないから、原告の右主張も採用できない。

九  以上のとおり、本件決定に原告主張の違法は存しないから、その取消しを求める原告の本訴請求は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用(参加によつて生じた費用を含む。)の負担につき行政事件訴訟法七条並びに民事訴訟法八九条及び九四条の規定を適用の上、主文のとおり判決する。

(裁判官 泉徳治 大藤敏 菅野博之)

別紙一、二〈省略〉

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